松尾芭蕉
山寺
「ぬきとめし」和歌短冊 北村季吟 筆 江戸時代前期(17-18世紀) 1幅 山寺芭蕉記念館蔵
「ぬきとめし」和歌短冊 北村季吟 筆
江戸時代前期(17-18世紀) 1幅 山寺芭蕉記念館蔵
ぬきとめし玉のを長き世々をへてたへぬ宮ゐの跡ぞかしこき 季吟
芭蕉の俳諧の師である北村季吟の詠んだ和歌です。
季吟は源氏物語など古典文学の研究で知られた学者であり、歴史や故実をふまえた和歌を詠むことがありました。この歌は和泉国長滝(現大阪府泉佐野市長滝)にある蟻通神社にまつわる伝説に基づいています。
平安時代の清少納言の随筆『枕草子』などに紹介されています。唐の帝が小国の日本に難題を出します。「穴が複雑に曲がった珠玉に五色の糸を通してみよ、できなければ日本を攻め取る」というのです。そこである貴族が父の老人に相談してその指図で、片方の口に蜜を塗っておいて、もう片方の口から糸を結びつけた蟻を入れてみると、無事に穴に糸を通します。その老人が死後蟻通の神となったという話です。
季吟の歌は、そのような蟻通明神に後の世まで参詣が絶えないのはまことに畏れ多く、だがすばらしく良いことだ、という意味です。