奥の細道
松尾芭蕉
石巻
石巻
『おくのほそ道』では、歌枕の「姉歯の松」などを訪ねようと思い、猟師や木こりしか通らないような道を進みましたが、道に迷ってしまい、思いがけず石巻の港に出た、と書かれています。ところが、曽良の日記を見ると実際には道に迷ってはいなかったことがわかります。つまり芭蕉はここでフィクションを書いたことがわかります。
芭蕉は中国晋代の陶淵明の『桃花源記』を意識していたと思います。漁師が道に迷ったて「桃源郷」にたどり着いたという設定にならい、たくさんの船が集まる賑やかな港町石巻を「桃源郷」に見立てているのです。
芭蕉と曽良は石巻を一望する日和山から風景を楽しみました。ただし『おくのほそ道』には「金華山」(石巻の東南牡鹿半島の先にある島)が見えたかのように記していますが、実際には見ることはできません。
ただし、仙台から松島を経て石巻に至る行程の途中で金華山が遠望できる地点がいくつかありますので、実際に芭蕉が金華山を見た可能性は高いです。芭蕉はその印象を石巻の部分に移して書いたのではないかと思われます。