松尾芭蕉
江戸時代の社会と文化
17世紀から日本は江戸(現在の東京)にいた将軍が統治する、「江戸時代」の後半期に入っていました。日本ではサムライが治める藩が260くらいありました。それぞれの藩は、幕府に厳しく監視されながらも藩主(大名)が独立した政治を行っていました。
ヨーロッパと違って日本ではサムライが政治的実権を握り続けたため、市民社会・民主主義社会は到来しませんでした。ですが、商人たちが経済的実権を握っていました。幕府をはじめサムライたちは体面を保つために商人からの借金を重ねていたのです。
ということでこの時代の日本では不完全ながらも市民社会に似たものが成立していました。当時江戸は人口百万人を超え、世界最大の都市の一つとなっていました。
文化
江戸に住む武士(特に下級の)や商人、あるいはさほど豊かでない職人たちも都市生活や文化を楽しんでいました。
たとえば、仏教や神道の聖地への旅行、梅や桜や紅葉といった季節ごとに景勝地に出かける行楽、歌舞伎や相撲といった娯楽に人気がありました。また、文学の分野では俳句やそれを滑稽にした川柳などが流行し、出版も盛んになり、多種多様な小説が出版されるとともに、人気俳優や相撲取り、美女や富士山などの景勝、江戸近郊の行楽地が描かれた浮世絵の版画がたくさん出されました。
識字率も比較的高く、日本男性の50%程度、女性の15%程度が文字を読めたと考えられています。武士はもちろん全員が文字を読めますが、武士とその家族は日本の総人口の10%程度ですので、字が読めないと仕事にならない商人はもちろん、人口の9割を占める農民でももかなりの人々が文字を読めたと考えられています。